お名前:ことみんさん
ご年齢:20代
地域 :北海道出身、神奈川県在住
今回インタビューをお願いしたのは、ベンチャーをメインターゲットとした成長支援サービスを提供している株式会社ウィルゲートでエンジニアとして勤務しながら、Xで5700人以上のフォロワー(2024年12月現在)をもつ、ことみん(@kotomin_m)さんです。
高専から新卒でWebエンジニアとしてのキャリアをスタートし、現在はSRE(Site Reliability Engineer)として活躍する傍ら、数々のカンファレンスやイベントの運営・登壇を行うことみんさんのキャリアストーリーは明確なターニングポイントとエンジニアリングに対するマインドに支えられたものでした。
技術だけではないエンジニアとしての大事な視点
ーー入社から現在のSRE1という職種に就かれるまでの経緯をお聞かせください
入社当初はWebアプリケーションエンジニアとしてフロントエンド、バックエンドの両方を経験しました。
技術としてはフロントエンドではTypescript/React、バックエンドではPHP/Laravelをメインとして業務をしていました。
入社から3年目の1年ほど前に社内のSREチームに異動することになりました。
SREとしては主に言語やフレームワークのバージョンアップやバックエンドの改善など、プロダクトの信頼性を支える業務や技術的負債の改善に取り組んでいます。
こういった仕事を通じて開発者が安心してプロダクトの機能追加や改善に専念できるよう支援することがたのしいと感じていますし、単にやる必要があるからやるのではなく「自分のやったことが最終的にどのようにユーザーに繋がっているのか?」と考えながら進めることで、プロダクトに貢献している実感を得られています。
ーーユーザー視点の考え方が重要ということですね
そうですね、ユーザー視点はエンジニアにとってとても大切な考え方だと思います。
技術ももちろん重要ですが、それ以上に「なぜこの機能が存在しているのか」「誰が使うのか」という視点を持つことが重要だと考えています。
例えばコードを書いたり改善したりするときにそのコードがユーザー体験にどう関わるのかを理解していると、ただ動くコードを作るだけではなく「意味のあるコード」を書けるようになると思っています。
ユーザーはもちろん、今の開発チームに合わせた仕事ができるように、どんな仕事にたいしても常に「なぜ」を意識することがエンジニアリングの質を高めるために必要だと感じています。
ーーことみんさんのコードに対する視点に影響を与えた出来事はありますか?
最近ではPHPカンファレンス香川2024でゲストスピーカーを務められたGMOの成瀬さんの講演が特に印象に残っています。
成瀬さんの講演を聞いたあと、Ask the Speakerでお話したとき「自分が担当しているシステムは全部自分のコードという意識が大事。だからこそ丸ごと消すという選択もできるし、良くしていく選択もできる」という考え方が心に深く響きました。
私自身1、2年目の頃は似たようなコードをコピペして部分的な箇所だけを変更するような作業をしていました。
その結果、設計のアーキテクチャに合わないコードをそのまま使い、気づかないうちに質の良くないコードを作ってしまっていました。
3〜4年目になって、その問題に気づいて少し反省しました。
そして最近そういったコードに手を加えるときは「この設計は理想的ではないが、今のタイミングで丸ごと直すことは難しい。だからこそ少しでも良い妥協点を見つけよう」という発想ができるようになりました。
成瀬さんの話とは直接関係ありませんが、この数年でコードに対する責任感が大きく高まりました。
自分が触れるコードには責任を持ち「常に改善を意識する」姿勢を大切にしています。
きっかけをくれたカンファレンスへの恩返し、今しかできない経験を求めて。
ーーエンジニアを目指すことになったきっかけもカンファレンスやコミュニティだとお聞きしました
高専入学前はパソコンに興味はあったもののプログラミング経験はなく「面白そうだな」という程度の関心でした。
高専では情報系を選択し、1年生からプログラミングに触れる授業が始まりました。
アプリコンテストへの参加やプログラミングの部活動を通じて、ものづくりに熱中していく中で3年生のときに友人に誘われて初めて参加したのが「オープンソースカンファレンス 2018 Hokkaido」でした。
そのカンファレンスでの体験は私の人生において大きな転機となりました。
エンジニアという職業について詳しい知識はありませんでしたが、Webエンジニアの方々との会話は非常に刺激的で働き方にも大きな魅力を感じました。
また技術について楽しそうに話す参加者のみなさんや登壇者として発表する方々の姿に憧れ、すっかりカンファレンスという場の魅力に引き込まれました。
このときに北海道の情報系学生があつまるLOCAL学生部に誘われて技術コミュニティへ参加し、他のイベントにも足を運ぶようになったことで気が付いたらエンジニアを目指す道へ進んでいました。
ーー初めての参加から数年経った今は運営・登壇側でも活躍されていて、非常にエネルギッシュかつパワフルな印象を受けます。その原動力はご自身のどこにありますか?
私の原動力は大きく分けて2つあります。
まず1つ目は初めて参加したカンファレンスのおかげで技術コミュニティを知り、エンジニアという道を切り開くきっかけをもらえたことへの「恩返し」です。
私自身がカンファレンスを通じて技術の楽しさを知ってエンジニア人生を楽しんでいるので、次はだれかにきっかけを与えられる存在になりたいと思っています。
今も多くの方が技術コミュニティやカンファレンスに参加していますが、まだ技術コミュニティを知らない方ももちろんいると思います。
もっと多くの人にこの魅力を知ってもらい、コミュニティが盛り上がっていくことはもちろん、私みたいにエンジニアを楽しんでいる人をもっと増やしたいというのが目標です。
次に2つ目は高専を卒業後、大学には進学せずエンジニアとして社会に出る道を選んだことです。
私が進路を選ぶとき、この先4年間で大学/大学院生活でしか得られない経験を追求するか、あるいはすぐに社会に出て実務経験を積むかという取捨選択を考えていました。そして、色々悩んで結果的には就職の道を選びました。
現在社会人4年目を迎え同年代の大学院に進学した方々が卒業する年齢と同じです。私は「この4年間は大学に行かなかったからこそ得られる経験を最大限に活かそう」と考え、ただ仕事をするだけでなく多様な経験を積むことに注力してきました。
その結果、自分のキャリアや技術の幅を広げることができたと感じています。
時々「大変そう」と言われることもありますが、ありがたいことに自分がやりたいと思うことに取り組めているのであまりそうした感覚はありません。
自分にとってはすべてが楽しく「趣味:技術カンファレンス」みたいな感覚です(笑)。
かけ合わさったオリジナリティを強みに目指すのは「かっこいい」ロールモデルエンジニア
ーー様々なことをアクティブに経験する中で悩むタイミングも多いかと思いますが、どのように判断をされていますか。
決まった相談相手はいませんが、悩みを共有したり相談したりする場も技術コミュニティです。
ただ常に意識しているのは澤円さんの著書『あたりまえを疑え。』にある「3つ掛け合わせるとオリジナリティになる」という考え方です。
1つの分野でトップになるのは非常に難しいですが、得意なことが3つあればその掛け合わせで唯一無二の存在になれる。
この発想を軸に経験を重ね、自分の得意分野を増やしていこうと考えています。
ーーキャリアを歩む中で目指す姿や技術的な目標はありますか?
キャリアを歩む中で私が目指すのは経験を1つのストーリーとして繋げ、それを語れる存在になること。
そしてそのストーリーを体現し続け、多くの人から「かっこいいエンジニア」と思われるようなロールモデルになることです。
単にスキルが高いだけでなく経験に基づいた知識を持ち、その知識を活かして自然と周囲の人に信頼され尊敬される、そういう人になれたら嬉しいです。
ただしこれは「なろうとしたらなれる」ものではなく、目の前の課題や目標に一つ一つ着実に取り組み、自分のキャリアを積み重ねてきた結果として自然にそう見られる存在になっていくのかなと私は思います。
そのため誰かのロールモデルになろうと意識するのではなく、長い年月をかけてエンジニアリングに真摯に向き合い、地道に実績を積み重ねていくことで自分の道を着実に歩んできた結果、「この道を選んだからこそ今がある」と胸を張って言える人間になりたいと考えています。
また、技術に関してもまだまだ伸ばしたい部分がたくさんあります。
現在はSREというロールなので、もっとインフラ寄りの知識やシステムの信頼性向上に関わる技術を学んでいきたいです。
そしてゆくゆくはフロントエンドからインフラに至るまでのあらゆる技術を使いこなせるようになって、どんな技術的な課題に対しても対応できるエンジニアを目指しています。
技術の変化は速いので、柔軟性を持ちながら新しい知識を常に取り入れる姿勢を大切にしていきたいです。
ーー最後にご覧になられているエンジニアの皆さんにメッセージをお願いします。
これは自分にも言い聞かせる内容ですが、エンジニアとして成長していく上で技術的なスキルはもちろん「誰のためにその技術を使うのか」という視点を持つことが大切だと思います。
その視点を持つことで自分の仕事の意義を再確認し、プロダクト全体やユーザーへの影響を意識しながら取り組むことで、課題をエンジニアリングで解決することが実現できるようになると思います。
そして、「技術コミュニティに1回参加してみてほしい!」ということも伝えたいです!
きっと新しい世界が広がると思いますよ!
- システム開発の運用フェーズにおいて、ツール類を使用してシステム管理や問題解決、運用業務を自動化する仕組みのことです。 ↩︎
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