お名前:RIOさん
ご年齢:20代後半
地域 :神奈川の鎌倉在住
今回インタビューをお願いしたのは、Xでフォロワー(3,150人/2024年9月現在)を集め、Next.js, Node.js, AWSでの開発を専門とし、日々Zennなどで知見を発信する傍ら、最近では現役エンジニア向けのコーチングも行っている、20代のエンジニアRIO(@rio_devops)さんです。
Web系SaaSスタートアップ企業でフロントエンド中心のエンジニアとしてキャリアをスタート、その後フリーランスを経て、現在は再び会社員に戻り、リードエンジニアとして働くRIOさんのキャリア。
そこには、フロントエンドからバックエンドへのシフトや、フリーランスとしての挑戦、情報収集の重要性などエンジニア愛に溢れたヒントが見つけられました。
スタートアップでキャリアスタート そして募り続けるバックエンドへの想い
――新卒からWebエンジニアとしてのキャリアをスタートさせたとのことですが、それまでにも紆余曲折があったとお聞きしました。
はい、実は大学4年の4月まではSIerに行こうと思っていて、実際に内定ももらっていました。
しかし時期を同じくしてYouTubeなどをきっかけにWebエンジニアという職種があることを知り、かつ技術を好きな人が、オープンに働いているという印象を持ったので方向転換しました。
その後、秋にはWebエンジニアとして内定をいただき、福岡の大学を卒業して、上京、新卒でWeb系SaaSのスタートアップに就職したという流れになります。
――1社目となるWeb系SaaSのスタートアップではどのような業務を担当されていましたか?
その会社はAIで動画を生成できるSaaSサービスを展開していたのですが、そこでフロントエンドエンジニアとして画面側の実装を行うエンジニアとして働いていました。
元々は、バックエンドやインフラに興味があったのですが、会社側の都合もあり、フロントエンドエンジニアとしての入社となりました。
――動画系のエンジニアは非常に難易度が高いように見えます。
難易度に関してはフロントエンドとはいえ、割と高めだという感覚はありました。
動画系の編集ソフトって何も知らない方からしたら作るのが簡単に見えるかもしれないですが、いろんな状態が一個の画面に入ってて、時間に応じて変更されるタイムライン機能や、軸といわゆる座標の情報を扱う必要もあったりして、それがどこに格納されるとかなどは手を焼きました。
フリーランスへの転身 バックエンドへの挑戦と孤独感
――その後2022年にフリーランスになられた。
そうですね。一応フロントエンドエンジニアとしては割と仕事ができるようになったという思いがあったので、自由な市場に身を置いて自分の力が通用するかどうかというのを試してみたかったというのが大きな理由です。
もう一つは、前の職場ではバックエンドの業務をメインにできなかったというのもあります。自分がいた会社ではフロントエンドチームとバックエンドチームをしっかり分けていたため、移動ができずそこを窮屈に感じるようになっていました。フリーランスだとそのあたりは自分の力、技術次第でどうにでもなると思ったのも決め手となりました。
――新卒で入社した会社をやめて会社員からフリーランスになったわけですが、思い返してみて、後悔や苦労したことはありましたか?
新卒からずっとフルリモートでやってきたというのを加味しても、会社員じゃなくなることによって繋がりがなくなる、その孤独感を感じることは正直多かったです。しかしアクティブにコミュニティなどに参加したことによってかなりその感覚は解消できたと思います。
また興味があったとは言え、フロントエンドの業務から経験の浅いバックエンドに入っていくことになったため、0から勉強が必要になったことは大変でした。業務委託だった頃の方が早いキャッチアップが求められがちだったので、土日もずっと勉強していたと記憶しています。
――フロントエンドからバックエンドへって少なからず壁があるような気がして、そこを皆さん悩まれていると思います。
おっしゃる通りだと思います。フロントエンドから入った方は、フロントエンド止まりする方が割と多いので、フロントエンドから入ったにも関わらずバックエンドやインフラなどのほか領域もやりたいという自分みたいな人は少々珍しいかもしれません。
メガベンチャーの会社員に 自分の強みを理解し、重宝される人材へ
――1年半ぐらいのフリーランス期間を経て、今は本業を会社員として働いていらっしゃいますね。
開業の届けは出しているのでフリーランスが終わったというわけではないですが、会社員が本業になったという感じです。
フリーランスで入っていた案件が終わったタイミングで、一度規模の大きい会社に入ろうと思って、従業員1000人、歴も20年程の会社に入りました。
スタートアップとしてゼロイチでサービスを作っていった場合、規模が小さいところからだんだんグロースしていくに従って、課題も変わっていくと思います。大きくなった先の問題、課題を経験しておきたい、学んでおきたいと思ったというのが動機です。
――現職ではどのような業務をされていますか?
MAUが1900万ほどある大規模サイトにてプロジェクトリードエンジニアとして携わっていまして、最近だとトップ画面のリプレイスをやらせていただいたり、バッチ処理などのバックエンド処理やそのインフラ構築などはメインで自分が対応している状態です。
フロントエンドもバックエンドも見ることができて、全体像を掴めるため非常に楽しいと感じています。
また、今後は事業に興味を持ち、積極的に発言してくれるエンジニアが求められていたようで、行動する、意見するといった部分で上層部の方から期待されている感じはしています。
――そのあたりこそRIOさんが普通のエンジニアさんとは一味違う部分があるってことなのかと思います。技術や分野において、自分の強みはどこにあると思いますか?
私の特徴は、総合的に様々な技術に取り組んでいるところだと思っています。
インフラ構築については、ゼロイチで手掛けており、特にAWSという技術に精通していること、またTypeScriptを活用してフロントエンドとバックエンドの両面でフルスタックに開発できるとが強みだと考えています。
一見すると技術が散在しているように見えるかもしれませんが、それぞれの分野の力を合わせて総合的な力を発揮できるタイプだと思います。
苦しい状況のエンジニアへメッセージを発信する理由
――先ほどの行動する、意見するという部分に関連するのですが、自身でプログラミングを教える機会を設けたり、様々な媒体で記事の執筆をされていらっしゃいます。このような活動について、動機などを含めてお聞かせください。
フリーランスの頃に、引き続きフルリモートで人と関わる機会がなく、何かしようと思って色々始めたというのが正直なきっかけです(笑)。しかし思っていた以上にXのフォロワーが増えたり、Zennの記事にも反響が生まれたりして、これだけ反応もらえるんだったら続けていこうと思いました。
――Zennの記事には1000いいねついているものもありますが、相当な労力がかかっているように見えます。
確かに小論文ほどのボリューム感ですが(笑)、執筆時間にしたら8時間、丸一日ぐらいですね。
やはりいいねや、反応をもらえると嬉しいので時間を忘れて書いてしまっている時もあります。
――そのような発信をしていて良かったことはありますか?
交流会や外部に行った時に、ちょっとお話に出してもらえてコミュニケーションできることが一番大きいことだと思います。
あとは開業している身なので、記事を見てくれている人と業務委託などの仕事に繋がるというのはあります。
――内容について、エンジニアさんに対して啓蒙というか、指針になるような発信が多いですよね。
みんなに頑張ってほしいって思いがあるのでそのような内容になっています。
昔の自分のようにフロントエンドとバックエンドが分離している結果、両分野を並行して担当することができず、思い描きたいキャリアになかなか進めないというような、苦しい状況に置かれている時はアドバイスや工夫があれば前進できると思っていますので、少しでも力になれればと思っています。
身近なロールモデルから得るモチベーションの力
――SNSなどで、キャリアの伸び悩みを感じている一部のエンジニアについて話題になっている場面を目にします。そのような方もみんな初心者の道をたどってきたエンジニアなわけですが、そういう状況の方々に対してアドバイスなどはありますか?
私はconnpassで参加したイベントで出会う方々から刺激を受ける事が多かったので、交流会に参加していろんな人に出会って刺激受けるっていうのは良い方法だと思います。
また、土日に技術に触れたり、個人開発、開発副業などで研鑽をするのは良い方法だと感じています。自分自身もそのようなきっかけを与えられる存在になれればと思っています。
――その人自身がまず変わるということが重要な一方で、環境になかなかコミットできないという場合もあると思います。例えばテストの現場に入って、ずっとテスト業務ばかりやっている、というような場合です。さらにそこからなかなか抜けられない、といったこともあると思います。
そのような現場に長くいると、多くの方が自分がダメなんじゃないかと思ってしまいます。私のところにもそういった悩みを持つWeb制作やSESの経験者が、「今後どうしよう」と相談に来ることが多いため現役エンジニアの視点からそういった方にコーチングを行うこともありますが、他にも経験のある方に相談したり、指導を受けることができれば、つまりメンターやロールモデルになる方が見つかれば理想的だなと感じています。
もっと身近に考えると、経歴や年齢が近いような人たちが頑張っているのを見て、自分も頑張ろうと思えるかもしれないです。
一番効率的な「交流会」で色のついた情報を
――先ほど勉強というワードが出てきました。RIOさんは業務で経験を積む以外でもかなり勉強されている印象です。内容、方針を教えてください。
勉強は結構している方だと思います。正確に測っている訳ではないですが、業務外や土日でも、気になった技術があれば触るということを継続しています。
内容としては、方針が決まっている訳ではなく、気になる技術が見つかったら手を付けるといった感じですが、具体的には、私は現在、最新のNode.jsを用いて開発を行っていますが、新しい技術の導入によって、従来の課題が解決されることも多いため、最新トレンドを追うことを重視しています。
参考にしているのはZennなどの記事やテック系のLTです。特に交流会では、記事のようなモノトーンの情報ではなく、色のついた情報を聞くことができるため、実は最も効率的な方法の一つだと思います。生の情報はセンスを磨く上でも重要ですし、一見面倒臭そうだったり非効率に見えるかもしれませんが、仲間ができるだけでも楽しいし心強いので参加することをお勧めします。
たとえばクラウド系ですと特にAWSは勉強した内容がすぐ業務に繋がることも多いので、勉強していて楽しいと思います。
――経験者へのアドバイスを行う一方、未経験者へエンジニアという職業を勧めている印象も受けます。
それはそうですね。なかなか頑張りが給与などの多面に反映されにくいような仕事も世の中にはあるなと思っています。しかし、Webエンジニアだと家にいながら仕事もできるし、給料も高まりやすいし、割と僕はエンジニアになるのに特別なスキルって必要ないと思っていて、いかに一個一個理解して進められるかっていうのが大事な職業だと思うので、万人に勧めやすい職業だと考えています。
しかも、エンジニアって職業は自分次第で一気に給料や単価が上がったりしますし、そういった意味では自分のスキル次第で報われやすい業界だと思います。
技術とキャリアを活かした社会貢献
――RIOさん自身の今後の展望をお聞かせください。
マネージメントというよりかはスペシャリストとして活動しながら、これまで行ってきた技術発信を教材化するなどでマネタイズしていくなど、技術を活用して利益を生む方法について模索しています。
もう一つは、ありがたいことに教える中で多くの知見を得ることができていますが、マンツーマンでの指導では教える人数が限られてしまうため、より良い教材を作成し、Reactに関する書籍などをしっかりと作りたいと思っています。自分の業務上知り得た開発経験を教育や指導に活かすことを通じて、社会貢献ができればと考えています。
――フリーランスや会社員のような働き方にはあまりこだわりはないですか?
私はまだ結婚してないので自由という部分はあるのですが、フリーランスや会社員に関してはどういう道でもいいのかなと思っています。
結婚やお子さんの誕生を機に会社員になる方も多いですが、フリーランスを続けるという選択をする方もいらっしゃるので、最終的には自身がどっちの道ならやり続けられるか、をしっかり見極めることが重要だと思います。
――最後に「RIOさんにとってのエンジニアとは」をお聞かせください。
物作りが好きな人の集まり、ですね。
以前のことはわかりませんが、Webエンジニアに関しては社会的地位が高まってきていると感じている一方、いまだに、社内受託チックに働いていてエンジニアの立場が低いような組織も一定数あると思うので、我々エンジニアはプライドを持って仕事に携わる集団でありたいと、そう願っています。
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